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HIFI日記:基礎からじっくり理解する周波数特性グラフ(F特)とウォーターフォール図

HIFI入門から極限までシリーズ

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最近、周波数特性(F特)に関する議論を見かける機会がありましたが、このテーマについて断片的な理解にとどまっている方が少なくないように感じられました。そこで今回は、周波数特性グラフやそれに関連するウォーターフォール図(累積減衰スペクトル)とは一体何なのか、そしてどのような役割を果たすのかについて、ブログ主が分かりやすく解説してみたいと思います。

1、周波数特性グラフ(F特)とは何か

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画像引用元:インターネット

一般的に目にする周波数特性グラフは上記の通りです。このグラフにおいて、縦軸は音圧レベル(dB)、横軸は周波数(Hz)を表しており、曲線は特定の周波数における瞬間的な音圧の大きさを示しています。シンプルに言えば、周波数特性グラフとは「各帯域でどれくらいの音圧が出ているか」を可視化したものです。そして理論上理想的とされる周波数特性は、起伏(凹凸)が少なく、フラット(平坦)に近い形状となります。

2、周波数特性グラフにはどんな役割があるのか?

周波数特性の役割を理解する前に、まずは様々な音の周波数レンジを把握しておく必要があります。

上図から分かるように、楽器やボーカルはそれぞれ固有の周波数帯に位置しています。周波数特性グラフを見れば、各楽器やボーカルがどれほどの音圧で鳴っているかをおおよそ把握することができます。

では、こうした音圧の分布を知ることに一体どれほどの意味があるのでしょうか?一言でまとめるなら、「それほど大きな意味はない」と言えます。周波数特性グラフはあくまで特定周波数の音圧レベルを示すものに過ぎないため、グラフ単体から判断できるのは、せいぜい各帯域の「量感」程度です。例えば、オーディオファンがよく口にする「低域が多すぎる」「中域がスカスカしている」「高域が刺さる」といった現象は、該当する帯域に突起、すなわち「ピーク(山)」が生じていることが原因です。逆に「低域が足りない」「ボーカルが引っ込んでいる」「高域が暗い」といった印象は、周波数特性に凹み、すなわち「ディップ(谷)」があることによって生じるのが一般的です。

しかし、周波数特性グラフで分かるのはそこまでです。得られる情報は極めて大まかなデータに過ぎず、再生機器の優劣を決定づけるには到底及びません。その理由について、ブログ主が順を追って解説していきましょう。

3、Equal Loudness Contours(等ラウドネス曲線):

1933年、ベル研究所で研究を行っていたアメリカの科学者ハーヴェイ・フレッチャー(Harvey Fletcher)とワイルデン・マンソン(Wilden Munson)が、米国音響学会誌(Journal of the Acoustic Society of America)に「Loudness, its definition, measurement and calculation」と題する人間の聴覚に関する論文を発表しました。彼らの研究によって、人間の耳はすべての周波数に対して均一な音圧知覚を持つわけではなく、異なる周波数に対する感度が音量の大小によって変化することが明らかになりました。

分かりやすく言えば、人間の耳が感じる周波数バランスは音量に極めて大きく左右されます。小音量時では、人間の耳は高域および低域に対する感度が著しく低下しますが、音量が上がるにつれてその差は小さくなります。より正確に言うと、1kHz以下の帯域では、周波数が低くなればなるほど、他の周波数と同じ大きさに聴こえるようにするためにはより大きな音圧が必要になります。また6kHzを超えると、人間の耳の感度は再び明確に低下していきます。

次に挙げられるのが、耳の物理構造による音響的な減衰と変化です。人間の耳の構造上、音が耳介から外耳道に入り鼓膜へと到達する過程で、すでに音の歪みや変化が生じています。さらに決定的な要因として、人類が進化の過程で獲得した生理的適応が挙げられます。例えば、人間の耳は3kHz付近の音に対して極めて敏感ですが、これは赤ん坊の泣き声がちょうどこの周波数帯に集中しているためであり、長い進化の歴史の中で、人間はこの帯域に対する感受性を特に研ぎ澄ませてきたのです。

こうした様々な要因があるため、周波数特性グラフ単体を見て「オーディオ機器の良し悪しを判断する」ことは不可能なのです。よく「優れたHIFI機器はフラットな周波数特性を追求しており、ピークやディップがないグラフこそが優秀だ」と言われますが、仮に物理的に完全にフラットな音を出力したとしても、人間の耳に届いた時点で自然とフラットではなくなってしまいます。では、オーディオメーカーはこの問題にどのようにアプローチしているのでしょうか?

4、ハーマンターゲットカーブ(Harman Target Curve)

メーカー各社が周波数特性の課題にどう向き合っているかを語る上で、外せないのが有名な「ハーマンカーブ(Harman Target Curve)」です。ハーマンカーブは、ハーマン・インターナショナルの音響エンジニアがリスニング環境、人間の耳の構造、再生機器などを総合的に考慮して導き出した標準的な「チューニング目標曲線」です。その目的は、人間の耳が最終的に知覚する周波数バランスをフラット、すなわち「聴感上のフラット」に近づけることにあります。したがって、ハーマンカーブはハーマン社が再生機器を設計する際の基準であり、同社が目指すサウンドの方向性を示しています。

ただし注意すべきなのは、ハーマンカーブもあくまでハーマン社独自のチューニング方針を表しているに過ぎず、業界全体の統一規格ではありません。ソニー(SONY)、ゼンハイザー(Sennheiser)、ベイヤーダイナミック(beyerdynamic)など他のメーカーも、それぞれ独自のチューニングカーブを持っており、それが各ブランドの音の伝統や個性を生み出しています。それらが「人間の耳にとって真にフラットでHIFIな音か」と問われれば、ブログ主としては「アジア人とヨーロッパ人とでは、耳の形状そのものからして明確に異なる」と申し上げるほかありません。

5、ウォーターフォール図(累積減衰スペクトル)とは何か

ここで一度、周波数特性の話に戻りましょう。先ほど周波数特性グラフによって「低域の多さ」「中域の抜け」「高域の刺さり」などをある程度把握できると述べました。ご存知の通り、音は物体の振動によって生じ、自然界では振幅が弱まるにつれて徐々に減衰していきます。ここで登場するのが「減衰時間(ディケイタイム)」という概念です。例えば先ほどの「低域の多さ」を例にとると、減衰が速い低域はキレが良く引き締まった印象を与えますが、減衰が遅い低域は音がもたつき、膨らみすぎた印象を与えます。ボーカルに当てはめると、減衰が速い中域はすっきりとクリアで凛とした響きになり、減衰が遅い中域は豊かで温かみのある余韻を生み出します。従来の平面的な2D周波数特性グラフではこの「減衰速度」を表現できないため、新たに時間軸(Z軸)を追加した3Dグラフが考案されました。これこそが「ウォーターフォール図(CSD:累積減衰スペクトル)」です。

図に示すのは、ベイヤーダイナミックのフラグシップヘッドホン「T1」のウォーターフォール図です。ボーカル成分が多く含まれる100Hz〜1000Hzの帯域において、T1の減衰速度が極めて速いことが見て取れます。これはT1本来のモニターライクで正確なサウンド特性と見事に合致しています。このように、ウォーターフォール図は周波数特性グラフに比べて遥かに多くの情報を含んでおり、機器の特性を評価する上でより精度の高い判断材料となります。

さて、ここまでお読みいただければ、周波数特性グラフとウォーターフォール図について基本的な理解が深まったかと思います。確かにこれらはオーディオ機器を選ぶ上で一定の参考価値を持ちます。しかし、音圧と減衰特性だけで製品の優劣を決めつけることは困難です。何より現代のオーディオ界において、「何をもって良い音とするか」という万人が納得する統一基準は存在しないのです。

一部のメーカーは製品ページに周波数特性グラフを好んで掲載していますが、もう少し踏み込んで、周波数特性やウォーターフォール図がオーディオ業界全体においてどのような意味を持つのかを紐解いてみましょう。

1、音響エンジニア・クリエイターにとっての意義

オーディオ産業全体において、HIFI(ピュアオーディオ)は極めてニッチな一領域に過ぎません。感性的な表現を好むオーディオファンと、専門知識と客観的な視点を重んじる音響プロフェッショナルの間には、本質的な言語のギャップが存在します。例えば、オーディオファンがある歌手のボーカルを聴いて「まるで数歳若返ったかのようにみずみずしい!」と感性豊かに表現するとき、ミキシングエンジニアやDJなら「500Hzが3dB持ち上がっている」と指摘するでしょう。

実際には、両者が伝えようとしている本質は同じである場合が多々あります。一般のリスナーにとって、感性的な言葉は自身の感動を伝える自然な手段であり、専門知識の蓄積や過酷な聴音訓練を必要としません。お互いの文化的なニュアンスが通じ合えば十分に共感できます。しかし、そうした表現は極めて抽象的で曖昧であり、客観的な基準や定量的な尺度にはなり得ません。プロフェッショナルにとって、そのような曖昧な意思疎通は非効率的で実用に耐えません。そのため、周波数や音圧といった正確な数値を用いてコミュニケーションを図るのが業界標準となっているのです。

2、ハードウェア開発メーカーにとっての意義

開発メーカーにとって、周波数特性グラフ単体の価値はそれほど高くありません。多くの場合、大まかな目安に過ぎず、場合によっては参考程度にしかならないことすらあります。再びベイヤーダイナミックを例に見てみましょう。

ご覧の通り、同じ世代の高級モデルである「T90」「T70p」「T5p」の3機種であっても、それぞれのウォーターフォール図は極めて明確な個体差・固有の特徴を示しており、シリーズとしての均一性や画一的な継承性はほとんど見られません。現在のオーディオ機器における繊細な音のチューニングは、依然として音響エンジニアの経験と耳(聴感)によって追い込まれており、ウォーターフォール図はあくまで検証やデバッグの参考ツールとして活用されているのが実態です。

もちろん例外もあります。厳格なプロ用モニタースピーカーを手掛けるメーカーは、周波数特性を極めて重視します。例えばフィンランドの著名メーカーであるジェネレック(Genelec)の音響補正ソフトウェア「GLM」に搭載された「AutoCal」機能は、あらゆる作業空間において各モニタースピーカーの周波数特性や位相応答を精密に測定・最適化することができます。

3、製造・量産工場にとっての意義

意外に思われるかもしれませんが、周波数特性グラフが最も威力を発揮するのは製造現場です。その役割を一言で言えば「品質管理(QC/QA)」です。例えばゼンハイザー「HD650」やAKG「K701」などの名機は何年、何十年にもわたってロングセラーを続け、グラド(GRADO)の製品群に至っては10年以上同じモデルが作られ続けています。その長い年月の間に、調達する部材や原材料が何度もマイナーチェンジされることがあります。その際、製品のサウンドが初期設計の意図から外れていないか、同一モデルの音質が一貫して保たれているかを確認する上で、周波数特性グラフは不可欠な指標となります。また、左右のドライバーユニット間の特性マッチングを検査する際にも活用されており、製造管理の現場で極めて広く役立っています。

以上で今回の解説は一区切りとなります。周波数特性やスペクトログラムにはまだまだ奥深い専門知識が存在しますが、より専門的な領域となり、一般的なオーディオファンの日常的なリスニング体験とは少し離れるため、今回は割愛いたします。興味を持たれた方は、ぜひご自身でもさらに深く探求してみてください。

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