音楽

HIFI日記:STAX X1000スーツ(SRM-270S+X1)イヤホンシステム音質レビュー

一、まえがき

数年の時を経て、ブログ主は再びSTAXの静電型(コンデンサー型)ヘッドホンを購入しました。実のところ、ブログ主のことを少しでもご存知の方ならお分かりかと思いますが、私は根っからのSTAX古参ファンです。007から009Sに至るまで、丸々2世代の静電型を使い倒しただけでなく、同世代の他社製静電型ヘッドホンも一通り聴き込んできました。しかし、据え置きヘッドホンから「アガリ(退焼)」して以降、ブログ主は手持ちのオーバーイヤー型をすべて手放し、それ以降はスピーカーとイヤホン(IEM)のみで音楽を楽しんできました。もう一生ヘッドホンを検討することはないだろうと思っていたのですが、最近になって現行世代のSTAXエントリーモデルであるX1000セットを聴く機会に恵まれました。エントリーの各価格帯をL300/L500/L700で埋め尽くしていた前世代とは異なり、現行世代のSTAXはフラッグシップのX9000とエントリーのX1という2モデルのみをリリースしています。定価で14倍もの開きがあるエントリー機ということもあり、前世代のLシリーズがブログ主の目にはかなり平凡に映っていたことも手伝って、当初はほとんど期待していませんでした。しかし、実際にオーディオショップ「天域聯達」の店頭でD10IIと組み合わせて試聴した際、この新世代STAXエントリー機のサウンドはブログ主に極めて大きな衝撃を与えたのです。それから間もなく、ブログ主は再びオーバーイヤーヘッドホンを購入することを決意しました。今度こそ本当にアガリ(ゴール)です(笑)

二、レビューの準備

今回レビューするヘッドホンはSTAX純正セットのX1000で、専用ドライバーユニット(アンプ)SR-272s(SRM-270S)とヘッドホンX1で構成されています。試聴テストに用いる上流システム(再生環境)の選定には、ブログ主も非常に頭を悩ませました。単に小型スティック型DAC(ドングルDAC)を繋ぐだけでは、X1000セットの音はごく平凡としか言いようがありません。しかし、ブログ主のメイン大型システムに組み込むと、極めて優れたサウンドを発揮します。熟考の末、ブログ主はX1000セットにはそれに見合う高品質な上流機を用意する価値が十分にあると判断しました。理由は3つあります。第1に、その音質水準の高さは、1万元(約20万円)クラスのいかなるヘッドホンとも互角以上に渡り合える実力を持つこと。第2に、多くのオーディオファンがブログ主と同様、これ以上高額なヘッドホンを長期保有せずスピーカー環境へ移行していく中で、本機がまさに「アガリ」のヘッドホンとなり得ること、そして上流機器のクオリティも将来的に時間とともに強化されていく可能性が高いこと。第3に、X1000セットは周辺環境に対して極めて敏感であり、設置するデスク、インシュレーター、さらには電源コンセントを変えるだけでも明確な音の変化が聴き取れるため、どうせ読者が完全に同一の環境を再現するのが難しいのであれば、ブログ主の手持ちの能力の範囲で限界まで上流を強化すべきだと考えたためです。こうして1ヶ月にわたるテストを経て、最終的に決定した試聴システムは以下の通りです:

PC(当初はUSB構成を検討しましたが、最終的に音質を追求してネットワークアイソレーション構成を選択)
CPU:AMD Ryzen 7 7800X3D
マザーボード:GIGABYTE B650E AORUS ELITE X AX ICE
ATX電源:SAMA XP1000W 悟空版
SSD:Gloway 弈シリーズ フラッグシップ版 4TB
再生ソフト:HQPlayer(LNS15/poly-sinc-long-ip/352.8k/NAA)
電源ケーブル:黒神電源ケーブル
電源ノイズフィルター:Bada LB5500

ネットワークアイソレーション
スイッチングハブ:NETGEAR GS105(MOD:リニア電源+SC-OCXOクロック化)
LANケーブル:Soundaware NC100
インシュレーター:Soundaware スパイク
スタビライザー:仏山架宗レプリカスタビライザー

ネットワークトランスポート
ブリッジ:Accurate N1000
電源ケーブル:Venture Grand Ultimate
ヒューズ:Synergistic Research ORANGE
インシュレーター:KRYNA D-PROP
同軸デジタル:Venture Grand Ultimate

DAC(D/Aコンバーター)
DAC:Accurate D1000
電源ケーブル:Venture Grand Ultimate
ヒューズ:AURALiC ブルースピリット
インシュレーター:KRYNA C-PROP
RCAケーブル:HUBER+SUHNER SF104E

端末(ヘッドホン系)
ドライバーユニット(アンプ):STAX SR-272s(SRM-270S)
ヘッドホン:STAX SR-X1
電源:純正付属電源アダプター(ケーブル含む)
インシュレーター:KRYNA C-PROP
スタビライザー:仏山架宗レプリカスタビライザー

比較対象のリファレンス環境には、ブログ主が長年愛用しているSTAX SRM-727II+SR-009のシステムを使用しました。727IIはPASSBY(プリアンプ直通スルーモード)に対応しているため、テスト時には5桁元クラス(数十万〜百万円クラス)の高品位XLRインターコネクトケーブルとプリアンプを組み合わせており、出音は極めて滑らかでナチュラルです。

三、試聴曲/採点基準

試聴曲にはブログ主が普段から愛聴しているリファレンス曲を選びました。ジャンルの比率はおよそアニソン・ACG系50%、ポップス30%、クラシック20%の構成となっています。評価基準はオーディオ専門誌『音響論壇』の劉漢盛氏による「オーディオ20要」をベースに簡略化したものを用いています。評価手法およびテスト環境は日々動的に更新されています。リニューアルしたオンライン採点プラットフォームも公開中ですので、DDC・DACからヘッドホン・スピーカーに至る各種スコアの閲覧や、ご自身の試聴メモ・スコア登録などにご活用ください。皆様のアクセスとご利用をお待ちしております。

四、試聴テスト開始

項目STAX 270s+X1STAX 727II+009Trafomatic Audio Primavera+1266PHI
サウンドの完成度・まとまり8/108/108.5/10
高音域8/109/108/10
中音域7.5/108/107.5/10
低音域7.5/107.5/1010/10
解像度・密度7.5/108.5/1010/10
音場・セパレーション7/108/109/10
ダイナミクス・伸び7.5/108/109.5/10
総合スコア7.6/108.1/108.9/10

1、楽曲名:たとえ どんなに…、アーティスト:西野カナ(西野加奈)

2011年にリリースされたシングル表題曲である『たとえ どんなに…』は、https://www.rainlain.com/?p=6766年代J-POPの特徴を色濃く反映した代表曲のひとつです。楽曲はR&Bとポップスのリズムおよび旋律を見事に融合させており、全編を通して響くどこか切ないドラムビートとベースラインが、非常に高い識別性をもたらしています。そして西野カナさんの声質は、楽曲が醸し出す現代的でありながらも温もりを失わない空気感に実によく馴染んでいます。商業的にもリリース後に素晴らしい実績を収めており、オリコンチャートのCDシングルランキングで最高5位を記録し、23週にわたってチャートインし続けるロングヒットとなりました。古くからJ-POPは美しいメロディと精緻なトラックメイキングが重視されてきましたが、『たとえ どんなに…』は当時の世界的トレンドであったR&B要素を巧みに取り入れ、日本人が得意とする繊細な感情表現と掛け合わせることで、当時の日本J-POP業界の成熟した完成度を遺憾なく発揮しています。もっとも、こうした王道のヒットポップスには「定型化された量産型スタイル」「イノベーションの不足」といった批判がつきまといがちです。しかし結局のところ、本作は流麗な旋律と、サビにおいて西野カナさんが地声に近い感情的な叫びで紡ぎ出す歌詩によって、恋する乙女の一途な執着と深い情愛を鮮やかに撃ち抜き、広範な共感を呼び起こすことに成功しています。

たとえどんなにどんなに強く
願ったってもう戻れないけど
遠い君を見えない君を
想い続けて

X1000の出音のファーストインプレッションは非常に興味深いものでした。ブログ主がNAAを経由せず、USBでDACに直結した状態では、ボーカルが耳元近くに定位し、バイノーラル録音(ダミーヘッド録音)特有の密着感がいっそう際立ちます。一方、HQPlayerのNAA経由でネットワークブリッジへと伝送すると、ボーカルに適度な距離感が生まれ、音のレイヤー構造(奥行きと階層感)がより一層明瞭になります。当初ブログ主は、このアプローチによってボーカルのディテールや濃密な空気感が損なわれるのではないかと懸念しましたが、じっくり聴き込むうちに、NAAがもたらす極めて自然でゆったりとしたボーカル表現こそが、本来アグレッシブになりがちなダミーヘッド録音の刺激感を抑え、極めて聴き疲れのない上質なリスニング体験を生み出しているのだと実感しました。ボーカルの微小なディテールを何一つ犠牲にすることなく、広々とした音場と充実した音響密度を両立させています。疑いなく、X1000の基本性能(とりわけ高音域の解像力)は、往年のダイナミック型フラッグシップ(HD800シリーズやT1シリーズなど)と同等、あるいはそれらを凌駕するレベルに達しています。より具体的に言えば、『たとえ どんなに…』という楽曲は音域のレンジが非常に広く、女性ボーカルがハイトーンへと駆け上がるパートは、システムのダイナミクスと高域の伸びやかさを強烈にテストします。X1000はこの2点における完成度が極めて高く、STAX静電型が誇る伝統の強み——明るく自然で、どこまでも澄み渡る美しい高域の余韻——を見事に継承しています。しかも驚かされたのは、かつてのSR-009シリーズと純正アンプの組み合わせに見られた低音域の力不足が見事に払拭されている点です。もちろんX1000も依然として低音の量感は控えめで、リバーブの減衰もやや早めではあるものの、沈み込みと量感は「健全かつ十分」なレベルをしっかりキープしています。高域の圧倒的なクオリティと比較すれば相対的に弱点と言えなくもありませんが、従来の009/009S+純正アンプの「欠落の美」に比べれば、X1000のサウンドチューニングは現代のポップス再生により一層マッチしています。この原稿を執筆している最中も、ブログ主はずっとこの曲をリピート再生していました。書き終えるまでに少なくとも十数回はループさせたはずですが、それでも飽きるどころか夢中で聴き入り、無意識のうちに足でリズムを取り続けていました。これこそが、ブログ主によるX1000システムへの最も直感的な賛辞と言えるでしょう。

2、楽曲名:Csikos Post(クシコス・ポスト / 郵便馬車)、アーティスト:Czech Philharmonic String Quartet(チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団)、アルバム名:Bouquet of Famous Melodies

『クシコス・ポスト(郵便馬車)』は、ドイツの作曲家ヘルマン・ネッケ(Hermann Necke)が作曲したギャロップ(Galop)舞曲です。極めて急速なテンポ、親しみやすく覚えやすい旋律、そして躍動感あふれる疾走感のあるリズムで世界中に知られています。後世において、本作はアニメ、映画、ドラマ、ゲームなど、あらゆる場面でBGMとして引用されており、誰もが一度は耳にしたことのある屈指の有名名曲小品です。本曲は発表されるや否や絶大な人気を博し、後に様々な形態や編成へと編曲され、世界各国のコンサートホールで華々しく演奏されるようになりました。

そしてチェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団(Czech Philharmonic String Quartet)による『クシコス・ポスト』の弦楽四重奏版アレンジは、世界で最も有名な名編曲・名録音のひとつに数えられます。第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロというわずか4挺の弦楽器のみで構成されたこの室内楽演奏は、息を呑むほどの明瞭度と正確さを担保しながら、まるで超絶技巧を見せつけるかのように極めて高度なアンサンブルバランスを維持しています。第1ヴァイオリンの旋律線は澄み渡り鮮烈に輝き、第2ヴァイオリンとヴィオラが緻密に絡み合って重層的で豊かな和声テクスチュアを形成、そしてチェロが堅牢かつ弾力に満ちた低音の土台を築くことで楽曲の音響密度を満たし、他のパートの魅力を余すところなく引き立てています。4本の弦楽器のコンビネーションは精密機械のごとく寸分の狂いもない一方、そこに宿る豊かな情感と強烈な躍動感は、まるで貴婦人たちが目の前で華麗に舞い踊っているかのようです。演奏全体が生気と情熱に満ち溢れており、聴く者すべてに爽快な高揚感と心地よい歓びをもたらしてくれます。

X1000で『郵便馬車』を聴いていると、無意識のうちについボリュームを上げたくなってしまいます。ボリュームノブを1時の位置まで回しても耳障りな刺激感を一切感じさせず、X1000が極めて優れた制動力と見事な帯域バランスのチューニングを備えていることを如実に物語っています。試聴の最中、ブログ主はこの古い録音におけるヴァイオリンの高音部に潜む録音上の粗(アラ)に何度も気づかされました。しかし、だからといってX1000が味気ないモニター調の音だと言いたいわけではありません。むしろ正反対で、録音の欠陥をはっきりと知覚させながらも、ブログ主は何のストレスもなく音楽に没頭し、そうした粗を自然と聞き流すことができたのです。その最大の要因は、X1000が誇る極めて滑らかでナチュラルな音楽性にあります。ここで強調しておきたいのは、もしヘッドホンが「高密度」と「音のゆとり(寛松感)」という2つの美点を同時に兼ね備えているならば、録音の良し悪しにかかわらず常に心地よいリスニング体験を提供できるということです。この万能とも言える懐の深さこそ、多くのハイエンド・フラッグシップ機ですらなかなか両立できない領域です。X1000の音場(サウンドステージ)は決して広大ではありませんが、空間の形が非常に整然としており、各楽器の定位とレイアウトが明瞭で、音像の結像感も極めてクリアです。標準的なフルオーケストラ用コンサートホールに例えるなら、X1000の音場感は1階席の左右がやや狭まった6〜9列目あたりに位置します。最も迫力に圧倒される特等席(前5列)ではないものの、各パートの演奏のディテールをじっくりと見通すにはまさに最適なポジションです。

五、総括

ご存知の方も多いかもしれませんが、ブログ主の評価基準において「0.5点」の差は完全にひとつのグレード(ランク)の差を意味します。しかもスコアが高くなればなるほど限界効用逓減が顕著になるため、0.1点のリードですら明白なアドバンテージと見なせます。したがって、SR-009がX1に対して丸々1ランク上のスコアを獲得したことについて、ブログ主は何の不思議も感じていません。なにしろ両者には約3倍の価格差があるのですから当然と言えます。一方で、X1のコストパフォーマンス(コスパ)に関しては、DIYブランドを含めて比較したとしても、まさに圧倒的であるとブログ主は確信しています。5,000元(約10万〜11万円)前後の価格帯において、X1000セットはブログ主がこれまでに試聴してきたあらゆるシステムの中で最高峰のコスパを誇る唯一無二の存在です。さらにX1ヘッドホン単体で約2,700元(約5万5000〜6万円)というプライスは、ミドルクラス機の価格でありながら伝統的なダイナミック型フラッグシップ機に匹敵する性能を叩き出しており、まさにコスパの頂点を極めています。しかし否定できない事実として、上流(フロントエンド)が十分に優れていない環境(例えばSTAX純正のD10IIなど)では、X1の音質や音色は大幅に損なわれてしまいます。一般的なダイナミック型フラッグシップ機と比べても、X1の上流機器に対する敏感さは遥かに高いのです。例えば、ブログ主はTASCAM X8レコーダーのラインアウト(LO)からRCA変換してX1000に入力したり、ポータブルUSB DACドングルからRCA直結したりしてみましたが、その音質は目も当てられないほど貧弱でした。そのような環境であれば、素直にダイナミック型ヘッドホンを選んだほうが遥かに良い結果が得られるはずです。したがってブログ主としては、少なくとも上流システムに5,000元(約10万〜11万円)以上、あるいは信頼できるDIY機器でも3,000元(約6万〜7万円)以上を投資できる環境が整って初めて、STAX X1000はその真価を発揮でき、購入する価値が生まれるとアドバイスします。D10IIのようなポータブル静電アンプを使用する場合、最低限のライン(下限)をどうにか維持できる程度に過ぎません。環境が許すのであれば、やはり据え置き型のデスクトップ環境を選択することをおすすめします。

また、前世代のLシリーズとの比較が気になっている方もいらっしゃるでしょう。ブログ主の見解としては、X1の基礎性能はL500を上回り、L700には及ばないという位置づけです。しかし、音場の立体的なまとまりはL700よりも整然としており(L700のほうが横幅は広いものの)、全帯域の透明感・クリアさにおいてL700を凌駕し、ジャンルを選ばないオールラウンド性(雑食性)もL700より優れています。少なくともブログ主の目線からすれば、L700はもはや存在価値のない製品だと感じます。もちろん、静電型に初めて足を踏み入れる初心者の方は、静電型専用ドライバーユニット(アンプ)は静電型ヘッドホン以外のいかなるヘッドホンにも使用できないという点に注意が必要です。初期費用を抑えたいからと、小型スティックDAC(ドングル)や一般的なポータブルDAPのラインアウト(LO)からRCA変換してX1000に接続しようと考えている方にとっては、失われるディテールが大きすぎます。正直なところ、これからゼロからシステムを組もうという初心者の方に無条件でおすすめすることはできません。もし導入するのであればドライバーユニットのアップグレードを視野に入れるべきであり、例えば現在中古市場で4,500元(約9万〜10万円)前後で入手可能なSTAX SRM-007tA真空管ドライバーユニットと組み合わせるほうが、新規にシステムを組む方にとっては遥かに魅力的な選択肢となるはずです。

総じて言えば、STAX X1000はブログ主が据え置き大型ヘッドホンから「アガリ」して数年が経った今、再びヘッドホンで音楽を聴く情熱を呼び覚ましてくれた素晴らしいシステムです。そのサウンドは情熱的かつ奔放で、SR-007の絢爛豪華さやSR-009/009Sシリーズのしなやかで冷徹な高貴さとは一線を画し、フラッグシップのSR-X9000と同様、R&Bや現代ポップスへと大きく舵を切ったチューニングが施されています。これは、数十年の歴史を誇る老舗ハイエンドオーディオメーカーであるSTAXが、現代のポピュラー音楽へとアプローチした重大なパラダイムシフトを意味します。そして紛れもなく、この変革は大成功を収めました。その結果として誕生したのが、STAXのこの10年間において最も全帯域のバランスが良く、最もコストパフォーマンスに優れたエントリーモデルです。STAX X1000は、STAX伝統の圧倒的な高音域の優位性を保ちつつ、低音域を一般的なダイナミック型ヘッドホンの大多数と同等の水準まで引き上げることに成功しています。正直なところ、X1000が低域のリバーブ時間をわずかに長めに取ることで低音の密度感と音像の肉厚さを補強している手法には、やや巧妙な演出感が見受けられます。そのため低音域の解像力は中音域や高音域に比べるとやや劣り、低域表現に長けた平面駆動型ヘッドホンと比べれば依然として明確な開きが存在するものの、近年のSTAXにおいてSR-X9000を除けば間違いなく最も中低域が心地よく鳴るヘッドホンに仕上がっています。

最終結論:現在のSRM-T8000+SR-X9000の恐ろしい販売価格(約7万元 / 約140万〜150万円)に比べれば、X1000は間違いなく近年のSTAXにおいて最もコストパフォーマンスに優れたエントリーシステムです。STAXのエントリー機とは銘打たれているものの、世の大多数のHi-Fiブランドから見れば、HD800S、HD820、T1 3rd、T5p、K812といった伝統的ダイナミック型フラッグシップ群と比較しても、全帯域の解像度と音響密度においてほぼ圧倒的なアドバンテージを誇ります。また、NAN7、HE1000 V2(HEKv2)、LCD-Xといった1万元(約20万円)クラスの平面駆動型ヘッドホンと比較した場合、解像度や密度では互角の勝負を繰り広げつつ、高域の美しさにおいては依然として優位を保っています。主な劣勢は低音域に集中しています。X1000の長所と短所はこれほどまでに明確であり、ブログ主も包み隠さず率直にお伝えできたかと思います。何よりX1000の価格帯は前述の競合ヘッドホンたちとは全く異なる手頃なクラスにあることを鑑み、ブログ主はSTAX X1000公式セットに「強く推奨」の評価を授けます。それでは、ブログ主の愛着、主観、そして偏見に満ちた今回のレビューはここまでといたします(=W=)

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